子供がボクシングをするというと一部には眉を潜める輩がいるかもしれないが、世界的にみれば「キッズ・ボクシング」は決して珍しいことではない。むしろ、欧米はじめ中南米などではサッカーやバスケットボールと同様に子供の遊びの延長として広く普及しているほどである。下記のデータを見ていただければ一目瞭然であろう。世界のトップ選手ともなると、十代後半で始めたというボクサーは極めて稀といってもいいだろう。
多くの国では、少年拳士たちが練習の成果を披露するためのキッズの大会 も頻繁に開催されている。もちろん、こうした大会においては入念なメディカル・チェックが行われていることはいうまでもない。
のちの世界6階級制覇チャンピオン、オスカー・デラ・ホーヤと、同じく3階級制覇を成し遂げるシェーン・モズリーが初めてグローブを交えたのは、米国ロサンゼルスで開催された少年の大会だったという。デラ・ホーヤ11歳、モズリー12歳のときのことである(結果はモズリーのポイント勝ち)。
少年ボクサーの多くは、やがてジュニアの大会にも出場するようになり、17歳を超えるとオリンピックや世界選手権出場を狙う者と、プロデビューを目指すものとに大別されることとなる。そしてアマチュアに残った者のなかからも、のちにプロ転向を果たす選手が出てくる。
この際、日本で普及している他の格闘競技のトップ選手の競技開始年齢も見てみたい。井上康生=5歳、鈴木桂治=3歳、谷亮子=7歳(以上、柔道)、伊調千春=6歳、伊調馨=1歳、吉田沙保理=5歳(以上、レスリング)。 さて、日本のボクシングはどうだろうか。輪島功一氏の26歳は極端な例としても、アマチュアを経ずに十代後半でボクシングを始めたという選手が多いという現実がある。それでいて55人(08年2月29日現在)もの世界チャンピオンを輩出しているのだから、いかに選手や関係者が奮闘しているかが窺い知れるというものだ。 そんななかにあって、少数派ではあるが幼少時からボクシングに親しんできた著名選手もいる。
いずれも日本が世界に誇るチャンピオンたちである。そして例外なく高度な攻防のテクニックを身につけた選手たちといえる。
当事者のひとり、大橋秀行氏は「小さいときからやっているとパンチの見切りやかわし方が分かるんです。早く始めただけテクニックの面で明らかなプラスがあります」と話す。 しかし、「ベビー・ボクシング」といわれた時代の西城氏や川島氏を除くと、練習の成果を公の場で発揮する機会は日本では皆無だったといえる。
現在も「第2の辰吉」「第2の長谷川」を目指してボクシングを習っている少年は全国に大勢いる。ボクシングジムに通っているものだけでなく、自宅で指導を受けている者も少なくないはずだ。 少年たちの試合を観戦した花形進氏(元世界フライ級チャンピオン)は、感心したようにこう話す。「小学生もそうだが、特に中学生ともなるとレベルが高い。すでにプロでも通用するような選手もいるほど。アマチュア、プロを問わず彼らにはこのままボクシングを続けていってほしい。そのためにも練習の成果を発揮する場が必要だ」 こうした経緯と現実を踏まえ、日本プロボクシング協会ではアマチュア、プロ双方の底辺拡大、ボクシングの普及を目的に今年8月24日(日)、東京・後楽園ホールで「U−15 全国大会」を開催するものである。 CopyRight 2008 Japan Pro Boxing Associations, All rights reserved. |